大阪に着き最初の2、3日で大雑把に環状線を撮り歩いた後、自分が思い描いていた大阪とのズレに軽いショックで憂鬱になったことを憶えている。「毎日街に出る」ということは出発前に決めていたことなので多少重くなった心と体を引きづりながらもシャッターは切っていた。気持ちは重かったのだが、ただ様々な場所を撮り進めていくうちに少しずつ大阪特有のあの匂いが体の中を染めていったように思う。それは西成に足を踏み入れた時にはっきりと自覚した。

自分の好みの街が分かってからはたまに遠出する以外はほとんど同じような場所を繰り返し撮り歩いていた。大阪だからこれを撮らねば、なんて考えは全く無く、普段と同じように体が反応したらあとはただシャッターを押すということに集中していたので東京でも撮るようなものにレンズを向けていた。ただ普段よりも大阪の方が撮っているというよりも撮らされているというような感覚が多かった気がする。

たったひと月半の滞在で大阪を撮りつくしたなんてことは全く考えていない。今回の写真は2008年夏に私が見た大阪です。

阿部真士